刺青
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爺さん (68)

 こういう時には生え抜きではない私にはホテル内に人脈がない。
「ホテルの方大変なんでしょ?」
 朱里がユミから聞いているのか心配そうに尋ねる。
「一度じっくり話したいことがある。でもこれが片付いてからだ」
「私も話したいことがある」
 今日はジョージがラブホでは有名な支配人をセットしてくれている。彼はラブホファンドで統括部長をしていた男で、証券会社の役員に追い出された履歴があり、今は小さなラブホの支配人をしてるという。息子の社長は親父に裏金の件を説明に出かけている。
「ラブホの寵児と言われている部長が話とは?」
 60歳を少し越えた頃だろうか、鬢に白いものが混じっている。
「私はラブホファンドに反対して追い出された人間です。部長はラブホファンドをなさろうとされていますね?」
「どうして反対されたのですか?」
 この話はジョージから聞いていて彼が欲しいと思ったのだ。この話は事前に社長には伝えてある。任せるとのことだった。
「証券マンの考えでは現場は動かないんだ。あくまでも利回りを上げてホテルを買い漁るのではいかんと思った。ただ反省もしているよ。まさに銀行から資金が付かない時代になったことだよ。今のホテルも18室の内4室がリホームできずに閉めたままだ」
「私は元銀行員だから現場が分からない。力を貸してほしいのです。爺さん」
 爺さんとジョージ達が呼んでいる。彼の下で育った支配人達がたくさんいるそうだ。
「この歳でまだ私は女を抱きに行ってます。SM館はよく運営されている。仁王さんの彼らしいですね?私も昔忘れられない女に会いました。彼女を失って女房は持てなくなりましたよ。もし使っていただけるならどんなところでも働きます」
「ありがとうございます」






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罠 (67)

 ワールドの本社に呼び出された。子会社の長男の社長も呼び出されている。お互い顔を合わせて首を傾げている。間髪入れず社長と本社兼務の役員が入ってくる。
「ラブホファンドについて聞きたいが?」
「それは前に話したでしょう?」
 息子が答える。
「いや、現場が反対しているようだ」
 支配人の連名書が机に置かれる。24名の支配人が名を連ねている。
「聞いたが財務部長にも知らせていないようだね?」
 兼務部長が口を挟む。
「企画書を見せたはずですよ」
 息子が反論しているがどうも罠にはめられたようで分が悪い。私は目配せして、
「一度内部で揉んでみます」
と引き下がった。金融関係はまとまったところで引くに引けない。
 私は社長をそのままSM館のグラブに連れて行く。それから鞄から調査中の財務部長の裏金レポートを見せる。
「これは出したくないのですが」
「まさか?」
「彼はこれ以上統制されたくなかったのだと思います。兼務部長はほとんど何も知らないでしょう」
「ソープ時代からか?」
「そのようです。金額としては1億は下らないと思います」
 社長にとっては彼は生え抜きの腹心だったのだ。
「少し時間をくれるか?」
「分かりました」






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裏金 (66)

 ジョージが入ると3人が頭を下げて紙を渡して出ていく。
「彼らは昔からの仲間です。呼び込みやらをしていますが、小遣いを渡すと情報を集めてくれるのです」
と言いながら定位置に掛けてビールを注いでくれる。
「これは半月ほど前に入った情報なのです」
 彼はポケットから隠し撮りした写真を出してくる。
「これは財務部長だな?それと3人はホテル創立期の古株の支配人だな」
 この頃は今の私の仕事は彼が担当していた。3人ともソープから来たはずだ。
「この時は写真だけしか撮れませんでしたが、2日前にはテープを入れました。財務部長はクラブで飲んでその後レッドソックスで女を抱かせていますよ。店の女に聞くと度々ということです。もちろんお金は部長が出しています」
「そんなに金を持っているとは思わないが?」
「それでソープから来た従業員に当たりましたが、どうもこの連中はソープ時代から売り上げを抜いていたようです」
「裏金?」
「彼らの息のかかっているホテルは12軒あります」
「社長は?」
「おそらく知らないでしょう。これは経理の女性に聞きましたが」
と販管費のリストを拡げて●をつけている。この部分が本社で一括購入されている。
「バックだな?」
「そちらで何件か裏を取れるか?」
「ええ」
「こちらは決算書を見てみる」
「やっぱりいたでしょう?」
 居酒屋にユミと朱里が顔を出す。








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ラブホファンド (65)

「体はどうだ?」
「少し良くなったみたい」
 朱里と並んで元町から会社まで歩く。いつ白血病の口火を切るのか悩んでいる。朱里がそこまで隠しているには訳があるのだ。
「今日は地元銀行の専務と飲むから先に寝ていてくれ」
 別れると社長と打ち合わせをする。2人の取締役に反対されているラブホファンドの設立を企画している。今後銀行からの借り入れが難しくなると判断したのだ。そのために社長は連日証券会社に出かけている。私は銀行とファイナンスを回っている。
「今回は融資ではなくて資本参加だね?」
 中華料理を食べながら専務になった本部長を接待する。書類はすでに審査部に提出済みだ。
「一応銀行2行、ファイナンス2社、証券会社1社に資本金をお願いしています。資本金としては合計2億からの出発を考えています」
「相変わらず大胆だな。企画書を見たが面白い」
「今日はSM館でどうですか?」
 今日のために裏口から部屋を押さえてある。ユミに指名を入れている。ユミには仁王が本番をしないことを頼んでいる。
「ジョージか?」
 事務所を覗くとまだパソコンにかじりついている。
「いつものところで1杯やるか?」
「面白い話がありますよ」





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白血病 (64)

 昼に元町で中華料理を元暴走族の女とユミと私で食べることになった。ユミ曰くどうも今のレッドソックスからこちらに移りたいようだ。
「薬を使ってるそうね?」
「それで客から首を絞められて危なかった子がいるの。それに外人が多くて病気が心配」
 私が紹興酒を2人に注ぐ。
「ところで暴走族のヘッドは交通事故ではなくて病死だとブログに書いていたそうだけど?」
「ええ。走っている途中にズレ落ちたの。それで慌てて救急車を呼んだ。私後ろについていたから。カーブを曲がる時にそのまま倒れた」
「そんなことってよくある?」
「あの頃は体調が悪かったみたい」
「妹は後ろに乗っていた?」
「その頃はヘッドが後ろに乗せなくなっていたわ。それでその時も後のバイクの後ろに乗っていたと思う」
「自覚症状があったのかしら?」
「それで?」
「病院に入った時は息が切れていた。妹が最後に救急車の中でお別れしたと言っていた」
「病名は?」
「白血病だって」
 白血病!?この名前は母親の病死の話で聞いていた。ひょっとして朱里も!?
「ユミ、しばらく内緒にしてほしい」
「分かった」





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夢人です。『ぽろんの女』の短編を書き下ろしてふと震災後にその街を訪ねました。それであの頃の日記を開いてみました。この街で刺青の仁王と暮らしたことが。

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