刺青
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避妊薬 (60)

 朝新聞をみると地元新聞の第1面に銀行の合併が出ている。頭取はやはり銀行局の天下りで、専務が双方の銀行から出ている形になっている。取締役も分け合ったという感じだ。双方に不良債権が多く多難な出発とある。人事部長もしっかりと常務で名を連ねている。
「どうした?無理しすぎじゃないのか?」
 朝久しぶりに抱こうとすると、顔色が悪い。額に冷や汗が浮いてきている。
「時々こうなるの」
「今日は休んだら?」
「少ししたら治るから」
「今日はジョージと広島で泊まる」
 これは社長のところに来た広島・岡山のホテル案件だ。今のところ姫路が一番西のホテルだ。4軒まとめてという交渉だ。資金は前回のファイナンスの時の水増し分をストックしているので問題ない。これは営業部長も了解している。
 新神戸に出るともうジョージが待っている。
「SM館の評判はどうだ?」
「連日予約で満員ですよ。それにクラブのショーが人気で、仁王のシオンは有名です。でも体が心配で今ユミと他のチームを組んでます。社長は仁王が抱かれること気にならないのですか?」
「気にはなる。でも止めることはできそうにない。現場にいる時は気を留めて見てやってくれ」
「結婚するのですか?」
「まだ当分無理だろうな」
 シオンがまだ私の時も避妊薬を使っているのが気になる。










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新しい生活 (59)

 元町からは二人で歩いて出勤をする。
「怒っていない?」
「社長に抱かれたことか?」
「そう。だって夜抱いてくれないもの」
「疲れただろうって思っただけだ」
 とは言うものの恋人を抱かせるのにはなかなか慣れない。朱里に抱かれるなという勇気がないと言うより彼女の求めるものを妨害したくないのだ。彼女は寸分を惜しんで体を求めているような気がする。どうも私がまだ理解できないところがあるのだ。
「今日は店にはいかない。社長と起業家塾に出る」
「英会話の社長によろしく言ってね」
 起業家塾は銀行を辞めて初めて出る。英会話の社長にはクリエイトに入ったことは伝えられている。
「進行係は君よ」
 飲み会の席に出るなり塾長に押し付けられた。この起業家塾はあの不動産会社の社長が追い詰められた結果神戸の唯一の起業家塾になっている。会員もここ1か月で50人に膨らんでいる。
「この機会にこのビルの最上階の空き室をクラブにしたいのよ」
「資金は?」
「1社100万出すと決めたわ。後は企画してよ」
 どうもクリエイトの社長が受けているようだ。クリエイトの社長が横からファイルを引き継ぐ。この団体は女性社長が半数いるのでSM館ようにはいかない。ジョージを帰りがけに呼び出だす。

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オープン (58)

 SM館『仁王』がオープンした。この名前は朱里が自分で決めたようだ。ジョージの週刊誌が受けたのか初日から大入り満員だ。支店長からここ数日携帯に着信がある。だがしっかり追いつめられてからだ。今日はクリエイトの社長も私もクラブに詰めている。ここは1階のクラブから指名をして部屋に上がるシステムにしている。夜には朱里が演出しショーが2回ある。
 1回目はシオンの名前で仁王とユミの絡みがある。シオンになった彼女には嫉妬しないと心に決めた。そうすることが二人の長続きする関係だと思い込むことにした。
「シオンを指名してもいいのか?」
 ショーの終わりに社長がもう一度念を押す。
「いいですよ」
 舞台の女性を指名する時だけセリになる。シオンが10万円で、ユミが8万で落札された。
 私は背中を見送って裏口から外に出る。
 薄暗い喫茶店にネクタイを外した支店長が掛けている。彼の着信とメモはもう30回を超えている。
「専務に捨てられたよ」
 開口一番そう言った。
「やりすぎたのですよ」
「人事部長にビデオを見せられた」
「私もそこまでしたくなかったですがね」
「今日付けで支店長は解かれ人事部付調査役になったが病欠した。専務は頭取になれずそのまま専務だ。相手の営業本部長が旨く立ち回って同格の専務だ。もう銀行員としては終わったよ」
「これからどうするのですか?」
「不正は不問とされたから裏金はあるがどうするか」
 目が虚ろになっている。私は最後の一瞥をして立ち上がった。






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攻防 (57)

 地元の週刊誌に銀行の合併と不正融資の件が出た。二つの銀行の本店の写真が並べられている。真っ先にジョージが持ってきた。そこには神戸支店も写っていて、証言している覆面男から正確な融資額と私が受け取ったバックだけがあげられている。主犯は代理だ!と言う見出しだ。
「そこまでやる?」
 ユミが口を尖らせている。今日から朱里も出てきていてクラブの準備をしている。
「ジョージ、あの盗撮のコピーはできている?」
「幾つも作りましたよ」
 彼の机もこの事務所にある。私はテープを手にすると時計を見て外に出る。朝週刊誌の内容を伝えて三宮で人事部長と会うことにしている。
 人事部長は渡された週刊誌を睨んで黙っている。
「実は支店長が専務を恐喝しているんだよ。つまりこの週刊誌のことを言っている。専務はバックを?」
「残念ながら貰っていたようだ」
「なら正面勝負はできませんね」
「とはいえ、揉め事が表面化すると専務の合併後頭取どころか位置がなくなる」
「外から頭取が来るのですね?」
「よく知ってるな?それで弱っている。それに君のバックを証明する行員がいるとのことだ」
 支店長はユミを使う気だ。
「このビデオを見てください。同じ時に退職した女子行員が映っています。彼女の彼氏が撮ったようです」
「ありがとう。このお返しはするよ」







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出発 (56)

 朝朱里と三宮で別れてクリエイトに出社する。もう地味なネクタイは捨てた。朱里も今日英会話の社長に辞表を出すと言っている。夜には元町の中華屋で退職祝いを二人ですることにしている。新しい出発だ。
 今日は社長と3時まで取引先の挨拶回りを駆け足で7軒回って、その後はSM館の最終面接を行う。私の肩書は業務部長だ。ユミも今日から9時からSM館の小さな事務所に出ている。クリエイトからは経理課長が出向してきている。1階のクラブのママは社長の朱里が兼ねる。ユミは現場の長の支配人だ。
「日替わり交代で、このスケジュールでこの子たちをはめ込んだよ」
と面接前にユミが作った評価表を見ながら24人の面接を5人毎行って、いつの間にか外は暗くなっていた。さすがにユミはこういう仕事は合っている。彼女のグループからも7人入っていて、後はジョージが探してきた。ジョージは終りごろにやってきてゲラ版の風俗情報誌を見せる。これはかねてから企画していたものでしっかりしている。店の紹介と人材募集も行うようにできている。
「今回はグラビアは仁王ですよ」
「シオンに了解取った?」
「もちろん!背中の大写しで我慢しましたが?」
「ユミは顔モロ出しだな?」
「私は賭けているから気にしないわ。朱里もシオンで顔を見せるって言ったけど代理に怒られたくないからさ」
「いつまでも代理はないだろう?」
「社長はこれから?」
「デートだよ。この仁王の写真いいかい?」
「もちろん見てもらってください」






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夢人です。『ぽろんの女』の短編を書き下ろしてふと震災後にその街を訪ねました。それであの頃の日記を開いてみました。この街で刺青の仁王と暮らしたことが。

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