刺青
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公式テンプレートを元に作成しています。 再配布は禁止ですが、それ以外はご自由にお使い下さい。

1歩踏み出す (27)

「どうしたことだろう?」
 眼を擦りながら銀行の通用口を入る。さすがに今日は9時ぎりぎりだ。支店長がFAXを手に私の席に来る。輸入雑貨店の新規案件だ。審査部長ではなく専務が決裁印を押している。
 内線で本店の人事部の副部長を呼び出す。
「いや、君か。ちょっと外からかけてくれないか?」
 どうも訳がありそうだ。通用口から路地に出て副部長の個人の携帯に繋げる。
「神戸支店が残ることになった。合併を進めている銀行は神戸に本店がある。その銀行が交渉の中でここの支店を欲しがっている。だから廃店させるのではなく立派な支店であってほしいと専務は考えている」
「戦略的融資ですか?」
「いや、立派な融資先だと言っておられた」
「合併はかなり進んでいるのですか?」
「3月末に人事異動がある。その時に話しに行くぞ」
 部屋に戻ると融資先に決裁の連絡を入れる。
 次長が3月末の予想預金量と融資量を出して支店長に見せている。
「最下位脱失ですよ」
「ああ」
「凄い代理!」
 茶髪のユミが奢ると口パクする。
「だめだ融資先に顔を出して帰る」
「そうしてくれ」 
 もちろん嘘だ。朱里が『末広』に退職の清算に行く。それでいつもの小料理屋で食事をすることになっている。それまでに部屋に戻って押し入れの鞄から100万束を用意する。まずそこから二人は1歩踏み出すことになる。銀行を辞めるかどうかもそこから繋がる道だ。













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オナニー (26)

 今度の旅は奇妙だった。私も朱里も激しいセックスをすることなく一晩語り明かした。蒲団の中で抱かれながら話す声を耳元で聞いているだけで今夜は十分幸せだった。朱里は『末広』を辞めることを考えている。
「『末広』には仁王を入れる費用が必要だったことと、私の体男を迎え入れてないと持たないの。変なことを妄想して・・・」
「朱里は正直なんだなあ」
「でも今日は疼いてこない。抱かれているだけで幸せよ。やはり他の男に抱かれているのって不愉快でしょ?私なら我慢が出来ない。この3日間抱かれてもしないし、オナニーもしてないよ。今も我慢が出来てる。変態じゃない」
「でも『末広』を辞めたら仁王が完成できないのでは?」
「仁王は諦められない。仁王がなければお兄さんの居場所がなくなる」
 頭の中に押し入れの鞄の金が浮かぶ。
「金は出すよ。だから『末広』は辞めよう。一緒に住むのは?」
「それもしばらく時間が欲しいの。部屋の中はお兄さんが生きていた時のままなの。二人で撮ったビデオや写真が一杯ある。しばらくそれを見てオナニーをしていた。気持ち悪いでしょう?きっと私もお兄さんもそうすることで寂しさを埋めようとしていたと思うの。あの首を絞めるので失禁して死にそうになったこともある。二人ともとことんやるタイプだから」
「朱里は何になりたい?」
「お兄さんが生きてた頃は二人でSM館を作りたいと言っていた。どうも二人ともまともなセックスでは燃えないの。でも今は自制を掛けれるようになったわ」
 いつの間にか窓が明るくなってきている。
「今日は英会話に出るの?」
「ええ」
「よし朝御飯を食べて駅に行こう」







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仁王を背負う (25)

「どうだ?」
 新しく来た次長の後ろの席から支店長が融資の判を押して声をかけてくる。
「いやこれはさすがに自信がないですね。新規先で2億4千万は審査部長も唾を飛ばして喚きますよ」
「どうする?」
「それでファイナンスにはすでに私が稟議を書いて決裁を採っています。でも責任を持って駆け合いに行きます。事業性や担保には問題ないですからね」
 5時に用事があると言うことで通用口から出る。2日続けて朱里が末広を休んでいる。英会話教室の時間割を貰っているのでビルの出口で待ってみようと思っている。5時半になって黒縁眼鏡の朱里が地味なスーツ姿で出てきた。肩をそっと叩いたが、叫びそうに飛び退く。
「周作だよ」
「じゃあ英会話の先生ばれた?」
「こちらもソープのボーイじゃなくて銀行員だ」
「知ってたよ。部屋に泊まった時置いていた名刺を見た」
「今日は『末広』に行くのか?」
「明石に行かない?兄さんと初めて行った料理旅館があるの。好きな人が出来たらここに泊まりに来いと言っていた」
「好きな人にしてもらえた?」
「それで悩んでいた。兄さんからも離れられない。私の体に住んでいるもの。それでいい?」
「3人で暮らそう」
 そのまま明石まで出て料理旅館に新婚のように入る。
 このまま違う道に行くのも悪くない。もともと私には行くべき道などなかった。






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体が膣 (24)

 英会話の女社長に気に入られたのか彼女の社長会のグループの輸入会社を紹介された。メインは都銀だがサブバンクがない。それがここ3年前から自前のスーパーを2軒運営を始めている。彼女も3代目だ。店舗を回って見ても人気は高い。ただメインは慎重なようだ。3店舗目の2億4千の融資だが決裁は苦労しそうだ。今月は営業から依頼のあった小口を8千万5軒を融資しているので手が回らない。珍しくらしく残業している。
 9時には鍵を閉めて一人通用口を出る。
「代理補!」
 茶髪のユミの声だ。
「こんな時間にどうした?」
「新しいマンションを契約して銀行見たら代理補が出てきた」
「またよからんところで働いてるのか?」
「そう。友達のデルヘルも登録してきた。将来飲食の店を持ちたいんだ。景気付けに第1号のお客さんになってよ。お金はいいよ。彼女には内緒でね」
 もう腕を組んで路地の中を抜けて行き部屋に上がる。最近の若い子はセックスに価値を置いていないようだ。シャワーを浴びて60分ユミを抱く。思ったより胸が大きい。
「わあ。始めてこんな興奮したの。お金払わないと」
 真面目な顔で言っている。
「いいよ。取り敢えず1万で勘弁だ」
 ユミの体はまだ男を知っていない。だが朱美は兄に隅々まで開発されている。体そのものが膣のようだ。






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英語の先生 (23)

 疲れると言うのも聞かないで朱里が寝る前と朝に挑んできた。翌朝は一緒に電車に乗って共稼ぎの夫婦のようの三宮に出る。朱里の勤めている先も聞いてみたいがまだまだ時間をかけるべきだろう気がする。別れて銀行に着くと支店長が相談があると支店長室に上がる。
「代理のことですか?」
「いや代理は昨日付で退職したよ。それで内々に人事副部長から君に代理をと言っている。私は大賛成だが?」
 この臨時の昇格で同期の最先端の出世になるようだ。でもまだ銀行生活に対しては心が揺らいでいる。
「でもそれなら私は検印席に張り付いてしまいます。融資はできませんよ」
「それは困る。それで副部長から話があったのだよ」
 また副部長が動き出したようだ。副部長の動きは専務の動きでもある。専務はここ3年前から合併話を進めているようだ。今の生え抜きの頭取が最後となる噂がある。だが最下位の神戸をどうするのか?
「今の調子だと最下位は免れると副部長は判断している。どうしても神戸の拠点は残したいと。それで次長を送ってきてくれると言うのだよ」
「廃店を免れるなら」
「そう伝えておくよ」
 私は予定の融資の挨拶に英会話の女社長と会うことになっている。三宮の中心街まで歩いて社長室に向かう廊下を歩いていると、教室のドアが開いて社長が顔を出す。なんとその教室で教えているのは朱里ではないか。
「知っている子?」
「いえ」
「うちの有望株なのよ。でもあの黒縁は駄目ね。サブメインだから頼むね。すぐじゃないけどこのビル建替えようと思っている。相談に乗ってよ」






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夢人です。『ぽろんの女』の短編を書き下ろしてふと震災後にその街を訪ねました。それであの頃の日記を開いてみました。この街で刺青の仁王と暮らしたことが。

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